損失を嫌がる強力な心理。
最終更新日:2022-6-22
人は喜びよりも痛みをより強く感じる。同じように利益を得たときより損をしたときの痛みをより強く感じる。
だから人が決断するときに最優先するのは損失の回避。利益を得たい気持ちよりも損をしたくない気持ちの方が強力に働く。
人は損失回避に対する強い執着があり、その結果合理的な判断ができなくなる。これがプロスペクト理論です。
損失回避を優先する心理のせいで、確率を歪めて認識してしまいます。痛みに弱い人間の典型的な行動パターンですね。
多くの人は高い確率で100万円もらえるより、100%の確率で30万円もらえる方を選択する心理。
1円ももらえないリスクを避けるために、合理的な判断ができなくなる。
これは「リスク回避型」という。
先程は「もらう」場合だが、これを「支払う」場合にすると逆の事が起きる。
この場合、「50%の確率で100万円支払う」を選ぶ人が多くなる。
人は「得した嬉しさより、損した嫌な気分」のほうを強く感じる。
このように人の判断は感情や感覚に歪められ、合理的に決定できなくなる。
損失を回避しようとする心理は「保険に加入しよう」という行動にでるだろうか。
結論からいうと、そうではなさそうです。
「プロスペクト理論からの保険加入分析」(萩原, 駿史)。(http://repository.seinan-gu.ac.jp/handle/123456789/1231)より。
将来起こるかもしれない損失と、今目の前で保険料を支払うという損失を天秤にかけて、「保険料を支払わない」選択をとるようです。ほんとはもっと熟慮する必要がありそうなのですが。たぶん私もします。目の前によく見える損があるから。
マーケティングへの活用
「損失回避性」を応用して「買わないと損ですよ」という仕掛けをつくる。
「損失回避性」というと保険が思い浮かぶが、通常の商品でも「期間限定」や「数量限定」、「閉店セール」、「在庫一掃セール」・・・たくさんある。
「リスク保証」のこと。
購入の不安を取り除いてあげる方法。
「返金保証」「分割払い」「カスタマーサポートの充実」「修理保証」・・・これもたくさんある。
表現の仕方で選択に不合理な影響を及ぼす。
どこを強調するかによって、与える印象や選択に影響を及ぼす現象。
利益を強調されたら損失を回避しようとする。
損失を強調されたらより大きな利益を得ようとする。
人は得しているときは安定志向になる。だから「利益を伝えるなら確実性を」。前述の「100%の確率で30万円を」である。
また、損している場合はリスク思考(損失を多く取り戻したいから高リスクでも数字の大きい方をとる」になる。だから、「損失を伝えるならリスク表現」。
生活の質や健康商品などの推進商品の場合はこれが効果的。
つまり、「10%の確率で失敗します」よりも「90%の確率で成功します」である。
健康志向や防犯グッズなどの予防商品も「損失」を強調すると効果ある。
放置することの損失、病気や危険をイメージさせる。
新聞・出版業界でみられる対策
印刷版がおとり、狙いはセット。
おとりがないとセットの販売は落ちる。
おとりがあるとセットは相対的にお得に見える。
ポイント還元
合理的には10%割引がお得だが、多くの人はBを選択する。
Aは割引しても支払いという損失しか生まれないが、Bはポイントという得るものがある。
また、ポイントを欲しがる人はすでにポイントを集める→ポイントを使うサイクルにハマっている。
そこもBを選択する理由になる。
「得した気分」が肥大しているのだ。
無料は「損する確率ゼロ」。
だからとても強いお得感が得られる。
なので、無料お試しセットや送料無料に惹きつけられる。
「無料は失う心配がない」ので、利益よりも損失を恐れる人間には強力な吸引力になる。
上述の例にあるように、人は損失を嫌い、損をしない可能性がある方を重視する傾向があります。
反対に損失を取り戻したい場合はギャンブルに出る方を選択します。
取り戻した成果が、それまでの損失とのギャップが大きいほど、その成果を高く評価します。
スーパーで節約する感覚が、旅行先、さらにはマイホームを購入するときには麻痺しています。